薬剤のエキスパートとして医療従事者の一端を担う薬剤師。しかしその社会的役割の大切さの反面で、医師に比較して、国内ではその権限を抑えられています。そしてそれに比例するように給与ベースも欧米に比べるとかなり低くなっているのが現状です。そこで現在、その医療権限を上げるべく努力がなされています。ここでは、そんな状況を眺めてみたいと思います。
まず日本でのその歴史をみておきましょう。1874年に明治政府が医制(医師、薬剤師の教育・免許制度)を制定したことから始まります。その後、1889年に薬品営業並薬品取扱規則(薬律)が成立し、薬舗主は薬局、薬舗主は薬剤師と定義されました。
これが日本の原型となります。以降も、日本の医療や社会の変化に合わせて、その役割や職能も変化してきました。例えば、1893年には日本初の全国組織である大日本製薬会が発足しました。
また、1948年には医療法が施行され、医療機関で働く調剤専門職としての地位が確立されました。現在では、調剤だけでなく患者教育や服用指導なども行うようになりました。また地域や在宅で活動するケアマネージャーやホームドクターと連携することも増えています。
医療の質向上や福祉の増進に貢献する専門職として、国民や医療・介護関係者から信頼されることが求められています。しかし、日本の場合、欧米諸国と比べて業務内容や権限が限定されており、報酬も低いという問題があります。
そこで、その地位向上や職能拡大を目指すために、さまざまな取り組みが行われています。ここでは、その一部を紹介しておきたいと思います。まず、制度改革に力が入れられています。具体的には、薬機法改正や調剤報酬改定などの制度改革によって、調剤以外の業務(服薬指導、在宅医療など)を評価する仕組みが整備されてきています。
専門化を高める制度や教育制度の充実によって、高度な知識や技術を持つものを育成し、医療チームで活躍できる人材を確保する努力がなされています。さらに、全国組織や地域組織によって、互いの連携や情報交換を促進し、意見表明や政策提言が行われるようになっています。
医師に比べて、また、欧米諸国に比較して、その地位が低い現状を変えるべく奮闘している姿を見てきましたが、法的制度を抜本的に変えるにはまだ道は遠いと考えられています。しかし薬剤の高度専門性が高まっている現在、6年制に変更され大学での専門教育も充実していく中で、その社会的地位は高まる機運にあります。
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