医療機関を受診したあとは、調剤薬局に行って薬を受け取るのが一般的となった医薬分業が定着した今の時代ですが、これからは超高齢化社会へと突き進んでいくため、さらなる課題が生まれ、取り組む必要が生じてきています。
■薬の管理ができなくなる人が増える今の日本は十分高齢化社会ですが、今後、団塊の世代が後期高齢者になるにつけ、ますます高齢化が進んでいきます。そのため、日本はかつてない未曽有の超高齢化社会へと突入していきます。政府は在宅で医療を受け、さらには介護を行うよう推進していますので、必然的に高齢者自身が身の回りのことをやらなければならない事態が増えてきます。
まだ医療機関を自分で受診できるという人も、複数の医療機関で薬が処方されると、必然的に量が増えて管理が複雑になります。その結果、年間に何百億円もの薬が無駄になっているという事実が判明し、国も対策に乗り出しています。
その一環として、薬剤師が個人宅を訪問し、薬の管理や指導などを行うというものです。
薬剤師が個人宅を訪れ、薬についてのさまざまな疑問に答えたり、管理を手伝うといった仕事を行っているということは、まだまだ一般に広く知られているというわけではありません。家を訪れる医療従事者としては、訪問診療の医師、訪問看護の看護師、そして介護を行うヘルパーさんやケアマネジャーなどが浮かびますが、その中に薬に関する専門家が加わるという発想はなかなか出ませんでした。
それというのも、これまで薬の飲み残しや重複処方による薬の損害額をはっきりさせていなかったという点も理由として挙げられますし、薬というものは、薬局に取りに行くのが当たり前という固定観念があったためでもあります。
個人宅を訪問して仕事をするということで、今後どのようになっていくのが望ましいかと言えば、まずは余分な薬が処方されていないかが確認できるプロに、しっかり見てもらえるようになることです。さらには複数の医療機関を受診することで、薬の重複処方が行われていないかを確認することも大事で、これによって年間数百億ともいわれる無駄になる薬を出さずに済むことが可能になります。
また、高齢になって薬の管理ができずに困っている人のところへ行って、飲みやすいように分別したり、管理をしたりしてくれる人がいれば、高齢者にとって安心なこと、この上なしです。超高齢化社会を乗り切るには、無駄を省きながらも必要な薬は飲める環境にするために、薬剤師も外へ出ていくことが期待されます。