業務内容によっては、人と接する機会が多いこともあれば、まったく人と接することなく、一人で黙々と作業をする場合もあります。とはいえ、どんな職場でも、ある程度のコミュニケーション能力は問われることになります。
求められるのは薬を調剤することだけではない薬剤師に求められる仕事と言えば、処方箋を正確に読み取り、的確に、さらには無駄のない動きで薬を調剤することです。これが基本であることは間違いありませんが、これだけできれば合格かというとそうでもありません。
新しい業務が増えたためです。増えた業務は、近年定着した医薬分業によって生まれたと言っていいでしょう。医療機関で薬を渡していた時には、薬に対する説明もある程度医師が行っていたために、患者には指示された薬をこれは何日分で、どのタイミングで飲むかといったことを話す程度で済んでいました。
ところが、医薬分業が定着してからは、薬は薬で、よりしっかりと患者に説明する必要性が生じてきたからです。
調剤薬局に薬を受け取りに来た人に対しては、この薬は何のために飲む薬で、一日の服用回数は何回かや、食後などの飲むタイミングを説明します。さらに、処方が変わったり、新しくなった場合には、その経緯を聞いて確認することも大事です。
医師の処方箋に従って調剤した薬を、患者がきちんとその通りに飲んでいるかを確認するのも、今や薬剤師の仕事です。これを、服薬指導といい、必ず行うべきこととしています。
説明することはたくさんありますので、患者にきちんと話を聞いてもらうためには、どうしてもコミュニケーション能力が必要となります。しかしながら、調剤業務は得意でも、患者と話をするコミュニケーションを苦手とする人が意外と多いのが現状です。
薬を出す際、どのような薬を出すかということを説明する医師もいれば、単に薬を出しておくと言うだけの医師もいます。そうなると、服薬指導は患者がどの程度理解しているかを知るためにも、必要不可欠ということになります。
ただ、そのためには患者と話をする必要が生じますので、上手に話を聞きだしたり、疑問に思っていることを話してもらったりする会話の駆け引きが求められます。このコミュニケーションが苦手なため、服薬指導を満足にできないと悩んでいる薬剤師は多くいます。
とはいえ、苦手だからと敬遠していると、薬のプロならできたはずのトラブルを回避できないことも起こってきます。初めから上手な人はいないと考え、とにかく話をすることがスタートと言えそうです。